SEOやWebライティングの世界で、「ユーザーファースト」という言葉をよく耳にします。
読者のために書く。届ける相手のことを考える。検索する人の意図に応える。
それは正しい。でも、私はずっとひとつのことが気になっていました。
その「ユーザー」は、誰を想定していますか?
目が見える人。テキストを読める人。画面で情報を取る人。
もしかして、「ユーザーファースト」と言いながら、届けられる人を最初から絞り込んでいないでしょうか。
インターネットは、本当に誰のものになった
インターネットは今、本当の意味で誰もが使える場所になりました。
自動翻訳により言語の壁は小さくなり、AIの普及により、知識や表現のハンデも以前とは比べものにならないほど縮まっています。
日本語で書いた記事が、世界のどこかの誰かに届く。画像の中の文字さえも、自動で翻訳される時代です。
記事を「読む」だけでなく「聞く」選択をしている人も増えています。移動中に、家事をしながら、音声で情報を取る人たちにとって、テキストは耳から入るものです。
テクノロジーは、情報を届けられる人の範囲を広げ続けています。
では、発信する側はどうでしょうか。
AIインフォグラフィックが「推奨」される理由と、その死角
昨今、AI生成した図解やインフォグラフィックがSNSやnoteなどでたびたび話題になり、情報発信の手法として広がっています。
見た目がきれい。情報が整理されている。シェアされやすい。そういった理由で推奨されることがあります。
でも、私はこの手法をおすすめしません。
理由は、ユニバーサルデザインではないからです。
画像の中に閉じ込められたテキストは、テキストではありません。読み上げ機能は、画像の中の文字を読みません。ALT属性(代替テキスト)を設定すれば届く、と思っている方も多いかもしれない。私もそう思っていました。
でも、実際に試したところ、そうではありませんでした。
私が確認したこと
あるとき、私のnote読者に弱視の方がいて、「渡邉さんの記事が参考になっています」という声をいただきました。
うれしいと同時に、次第にひとつのことが気になってきたんです。
それは、画像に設定したALT属性は「分かりやすいのかどうか」ということ。
私の記事には補助として画像があります。グラフや手順を示すものに、ALT属性を丁寧に設定していました。その方はALT属性を通じて、私の記事の情報を正しく得られているのだろうか、と。
確認してみました。自分の記事を、3つの標準的な読み上げ環境で試しました。
- Windows のナレーター
- Google のリーディングモード
- Xiaomi スマートフォンの TalkBack
結果は、3つすべてで同じ。
ALT属性に設定したテキストは、どれひとつとして読み上げられませんでした。
その読者が私の記事を「参考になった」と言ってくれたのは、ALT属性のおかげではありませんでした。テキストで理解できるように本文を書いていたから、届いていた。それだけだったのかもしれません。
私は「できていたつもり」で、できていなかったのです。
情報は、取得できなければ存在しないのと同じ
AIインフォグラフィックの問題は、AI生成かどうかではありません。
画像の中に情報を閉じ込めることで、取得できない人が生まれるという構造の問題です。
目が見えない方。弱視の方。読み上げ機能を使っている方。記事を音声で聞いている方。そういった方々に、画像の中の言葉は届きません。
今は自動翻訳で言語の壁を越えられる時代です。でも、見えない方には画像の文字がどう伝わるのでしょうか。
相手の環境によって、立場によって、障害の有無によって、取得できない情報があってはならない。
それが、私の考えるユニバーサルデザインです。そして、本来の意味での「ユーザーファースト」ではないかと、私は問いたいのです。
画像は休憩であり、補足である
では、画像を使ってはいけないのかというと、そうではありません。
画像の役割は、テキストで伝えた内容を視覚的に補助することです。画像がなくても内容が理解できる状態をまず作る。その上で、画像は補足として添える。
画像は休憩であり、補足です。テキストコンテンツ(記事)のメインにはなり得ません。
インフォグラフィックをやめてほしいのではなく、重要な情報を画像の中に閉じ込めないでほしいのです。
伝えたいことは必ず文章で残す。画像はその理解を助けるために置く。その順序を守るだけで、届く人の範囲は大きく変わります。
ユーザーファーストを、もう一度問い直す
「ユーザーファースト」と言うとき、そのユーザーの中に、読み上げ機能を使っている人は含まれていますか。弱視の方は?言語が異なる方は?
記事やSNSなどのテキストコンテンツは、ユニバーサルデザインであるべきだと私は考えます。
誰が来ても、同じ情報に同じようにアクセスできる。それが真のユーザーファーストなのではないか。
この問いを持つだけで、発信の設計は変わるはずです。
クリエイターのあなたへ
AIインフォグラフィックを使うかどうかは、あなたが決めることです。
ただ、知らずに使うのと、知った上で選ぶのは違います。
届けたいと思っている相手に、本当に届いているか。その問いを一度だけ持ってみてください。
この考え方が、より良いコンテンツ制作の一助になればうれしいです。



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